“ひぐらし”古民家再生 【後編】

飯島に移住して5年。この春から飯島町内で居を移し、新しい暮らしを始めたハルカです。この3年近くの間、古民家と家づくりが大好きなパートナーと共に、古民家再生の道をゆっくりと歩んできました。この古民家を、私たちは“ひぐらし”と呼んでいます。引っ越しを機に、取得から入居までの約3年の道のりを振り返って記しておきたいと思います。
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( 1年目の様子はこちら)
2年目は、天井や新建材(石膏ボード・アルミサッシ・金属外壁材)等の撤去解体作業。
母屋は一旦、屋根と柱と土台だけの姿になりました。パートナーが力仕事を、私は現しになった柱梁や屋根裏のすす埃を掃除しました。はしごに登って箒で屋根裏をこすっていると…百数十年前の建前の時に柱にくくられたであろう、御幣(ごへい)と扇子、破魔矢が、朽ちかけた状態で見つかりました!埃まみれで作業をし続けた甲斐がありました。
外回りは、丈の長い雑草ばかりになっていた畦の草刈りや、厄介なクズやアレチウリを抜く作業。また、水と空気が循環しやすい土地になるように、溝を掘ったり焼き杭を打ち込んだりする作業を、友人たちと行いました。
1年後にはこれらの効果がしっかり実感できるようになった(部分的に湿っていた床下の土が乾き、庭や畦の植生が強い雑草から優しい草花に変化)ので、手を貸してくれた友人たちに心から感謝です。
他にも、崩れた石積みを補修したり(これも友人たちの力を借りました)、大きな斜面には階段や道を作って歩きやすくしたり。あれこれ勉強しながら植樹や畑作りも。緑に埋もれていた当初から、人の暮らしに近づけることができました。
このほか、土地家屋調査士さん、隣地の地主さんと共に敷地の境界確認をしたり。法務局に出向いて農地の登記手続きを自分でしてみたり。貴重な経験もできました。
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3年目になって、やっとセルフリノベーションらしい作業になりました。
まずは土台・柱の調整。古民家に傾きや歪みがあるのは珍しくないことですが、壁や床づくりの前段階として、水平垂直を出しておくのは大切な作業。パートナーがコツコツ、地道に作業を続けました。
そして木製建具の設置作業。納屋の奥に大切にしまわれていた建具や、古道具屋さんで手に入れたレトロなガラス窓、ご近所さんや知人から譲り受けた建具を寸法調整して取り付けました。釘を使わない組み立て式の建具は、すべて分解が可能で掃除もしやすく、先人の技と知恵に感心するばかりでした。
長い時間がかかったのが、外壁づくり。垂直を出しながら下地調整をしたのち、伊那谷産の落葉松材を貼りました。私は塗装を担当し、目板をとめる約4,000本の釘はすべてパートナーが手作業にて打ちつけました。
床張り作業も同様に、苦労して水平を出しながら下地づくりをし、断熱材を入れ、塗料を塗った床材を貼り…ここまで来ると、だいぶ家らしい形になってきました。
在来工法のお風呂づくりも、かなりの時間と労力を要しました。
残されていたのは元左官職人のご近所さんが50年前に作ったという薪焚きの五右衛門風呂。敬意を払いながら解体し、コンクリートブロックとモルタルで躯体を作って浴槽を設置し、タイルと檜板で仕上げました。D I Y歴が長いパートナーの集大成の作品となりました!
キッチンや最低限の居室の内装を仕上げる作業が終わったところで、この春、めでたく入居となりました。




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私たちの古民家再生作業は主にセルフリノベーションで進めてきたのですが、電気や水道関係の設備などは、地域の職人さんへ依頼した部分もあります。費用の一部は、町の補助を受けることができました。申請書の提出にはドキドキしながら向かったものでした。
実際には、同じく申請にきた同士の方々と和やかに情報交換をしたり、役場の方はおおらかに対応くださったりと、規模の小さい町ならではの心温まる日となりました。町が移住者を受け入れて応援してくれることが、そんなところからも実感できて、嬉しい気持ちになったものでした。
セルフリノベーションは、入居後もまだまだ続いていきます。“ひぐらし”のその後の様子や、地域の方々との交流についてもまた、紹介させていただけたらと思っています。
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