【農家さんの座談会 vol.1|前編 】[花農家×移住] 飯島町で暮らす二人の花農家

今回は飯島町へ移住し、テッポウユリを育てる山中さんと、アルストロメリアを育てる有賀さんのお二人にお話を伺いました。前編では、花農家としての日々の仕事や農業との向き合い方、現在の暮らしについて、農家さん同士だからこそ語ることができる本音トークをぜひ、お楽しみください!
【座談会メンバー】

やまなか農園 山中巧(やまなかたくみ)さん
三重県出身。東京都内で会社員時代を過ごし2017年に飯島町へ移住。3年間の地域おこし協力隊の研修期間を経て、テッポウユリ農家として独立。現在は夫婦で農業を営み、3人のお子さんを育てながら暮らしている。

有賀美和(ありがみわ)さん
岩手県出身。東京都内で会社員として働いたのち、2012年に飯島町へ移住。2年間の研修期間を経て、アルストロメリア農家として独立。信州フラワーショーでは最高位となる農林水産大臣賞を受賞。
テッポウユリとアルストロメリアの仕事風景
山中:私はテッポウユリを育てています。露地での栽培で、面積はだいたい60〜70アールほどです。夫婦で仕事をしていて、季節によって3〜4人ほどのアルバイトさんに来てもらっています。

山中:テッポウユリは露地栽培なので、寒い時期は毎日決まった作業があるわけではありません。冬は、来年の4月から始まる育苗に向けての準備や、畑の片付け、次年度の作付け計画を考えています。
夏になると収穫が始まるので、収穫したものの選別や出荷が毎日のルーティンになります。
その中で、草刈りや薬剤散布などの管理作業もあって、その時期はバタバタしながらあっという間に1日が過ぎていく感じですね。
露地栽培なので、天候に左右される部分も大きいです。雨や気温の変化を見ながら、その都度判断して動くことが多いですね。
有賀:私はアルストロメリアを育てています。ハウスが2棟で、面積は20アールほどです。私のほかに、パートさんが3人来てくれています。

有賀:アルストロメリアはハウス栽培なので、出荷は一年中あります。毎朝収穫をして、選別と出荷の準備まで行い、午後はハウス内の管理作業をしています。あとは、間引きなどの作業が1年を通して続く感じですね。一番収穫が多いのは4月と5月です。
ハウス栽培は一年中出荷がある分、気が抜けない感じはあります。毎日同じリズムで仕事が続くので、体力的にも気持ち的にも「積み重ねていく仕事」だなと感じています。
手をかけた分だけ、花は応えてくれる
山中:やっぱり、手をかけた分だけ作物は応えてくれるんです。最初の頃は時間の余裕もあったので、かなり丁寧に手をかけられて、良いものができていました。
でも、栽培面積が増えて余裕が無くなってくると、ここはいいか、あそこはいいか、となってしまう。それが全部、作物に出るんですよね。「初心を忘れるべからず」というのを、本当に実感しています。

有賀:私も同じです。最初の頃は、本当に何もわからなくて、仕事の流れもつかめず作業に追われるだけでした。
だんだん一年の流れがわかってきて、私自身も慣れて、パートさんたちも慣れてくると、先回りして仕事ができるようになりました。そうすると、花の質も良くなってきて、お客さんから「すごくきれいな花ですね」と言ってもらえるようになりました。
去年から農林水産大臣賞を続けて受賞することができて、10年以上やってきてようやくだんだんといいものが作れるようになってきたかな、という感じです。
賞をいただいた時ももちろん嬉しかったですが、それ以上に、毎日一緒に作業しているパートさんたちが自分のことのように喜んでくれたのが印象に残っています。
独立の不安と、続けてこられた理由
有賀:最初の研修中は収入がほとんどなかったので、貯金が減っていくのが不安でした。独立してからも、設備投資や苗代など、最初は一気にお金がかかって、回収できるか正直とても心配でした。
ですが、アルストロメリアは一年中出荷できて、農協の出荷体制もあったので比較的安定した経営が出来ています。

山中:農業は、作物を作るだけじゃなくて、環境を整える仕事が本当に多いです。選別する場所をどう作るか、どんな道具を揃えるか、全部自分で考えて動かないといけない。
東京でパソコンに向かって仕事をしていた人間が、スコップを持って土木作業をするところからのスタートは大きなギャップでした。
有賀: 例えばこの時期はどの農薬を使うか、水はどれくらいかけるか、そういう細かい判断が難しいです。ですが、隣の農家さんや部会の仲間の農家さんに、わからないことを聞ける環境だったのは本当に助かりました。
山中:部会での情報共有も大きいですね。みんなで切磋琢磨している感じがします。
私の場合は、研修が終わった後も親方さんが毎日のように畑を見に来てアドバイスをくれました。昨年、その親方さんは亡くなってしまいましたが、今でも「こんな時、(親方さんは)なんて言ったかな」と思い出しながら作業をしています。
仕事と暮らしの関わり方
有賀: 一年中出荷があるので、完全にオフという日は少ないです。でも、同じリズムで続けるのは、自分には合っているかなと思っています。
農地は家から車で5分くらいの距離にあるので、仕事と暮らしの切り替えは意外とあって、家に帰ると畑のことはできるだけ考えないようにしています。

山中:確かに東京にいた頃は、仕事が終わったら完全にオフでした。でも今は、生活と仕事がずっと地続きです。
特にうちは農地が自宅のすぐ隣なので、驚くほど切り替わらないです(笑)例えば、鳥が飛んでくるじゃないですか。ユリのつぼみの上に止まるんですよ。鳥に悪気はないのですが、つぼみが傷つくと商品にならなくて。
家にいて鳥が飛んでくるのを見ると、「あ…」って思ってしまいます(笑)急な天候の変化とか、何かあったらすぐに行けるのはいいんですけどね。天気が荒れそうな日は、夜でも様子を見に行ってしまうこともあります。生活のリズム自体が、季節や天気に合わせて変わりましたね。
前編では、お二人の普段の仕事や、花農家としての日々について伺いました。後編では、東京から飯島町へ移住したきっかけや、実際に暮らしてみて感じたこと、そしてこれから移住や就農を考える方に向けて、お話を伺いました。