【農家さんの座談会 vol.1|後編 】[花農家×移住] 移住と就農、その先の暮らし

飯島町へ移住し、農業を営むお二人による座談会。東京で会社員として働いていたお二人が、花農家として暮らす中で感じてきたことを伺います。後編では、移住のきっかけやその後の暮らし、そして移住や就農を考える方へ向けた思いについて、お二人の言葉で語っていただきました。
【座談会メンバー】

やまなか農園 山中巧(やまなかたくみ)さん
三重県出身。東京都内で会社員時代を過ごし2017年に飯島町へ移住。3年間の地域おこし協力隊の研修期間を経て、テッポウユリ農家として独立。現在は夫婦で農業を営み、3人のお子さんを育てながら暮らしている。

有賀美和(ありがみわ)さん
岩手県出身。東京都内で会社員として働いたのち、2012年に飯島町へ移住。2年間の研修期間を経て、アルストロメリア農家として独立。信州フラワーショーでは最高位となる農林水産大臣賞を受賞。
東京から飯島町へ。移住と就農のきっかけ
有賀:私はものを作る仕事がしたいと思ったのがきっかけです。
最初は、特に”花農家”と、決めていたわけではありませんでした。東京で農業フェアに行ったとき、たまたま長野県のブースで話を聞いたんです。
その時に、アルストロメリアは一年中出荷ができて、収入も比較的安定しやすいと聞いたのが大きかったですね。毎月収入があることは、生活を考えたときに大事なことだなと思いました。
あと、ハウスを一から建てるのは難しいけど、高齢化で空いたハウスを利用できると聞いて、また研修制度もあると聞き、話が進んでこちらに来ることになりました。いきなり独立ではなくて、ちゃんと教えてもらえる環境があることが安心に繋がりました。

山中:私はちょうど移住ブームの時期で、「移住」という選択肢があるんだ、というところからでした。農業をやりたいというよりは、まず「どこで暮らしたいか」を考えました。学生の頃から、中央道を通るたびにこの辺りの山の景色がすごく好きで、なんとなく憧れがあったんです。
いくつかの自治体を回って話を聞く中で、飯島町で「百合の研修生を探している」と聞きました。そこで初めて「ここならできるかもしれないな」と、少し現実味が出てきた感じでした。農業をやるかどうかは、正直、迷いました。こっちに来て、会社に勤めるという選択肢も考えましたし、リスクも大きそうだなと感じていました。
ただ、せっかく移住するなら、東京にいた時と同じことではなくて、違うことをやってみたいという気持ちもあって。百合の生産者さんが高齢化していて、「技術を引き継ぐ」という文脈があったこともあり、ここでやってみようと思いました。
移住して感じた、飯島町での暮らし
有賀: 会社員の頃は決まった時間に出勤して残業もある生活でした。今は忙しい時期は大変ですが、それ以外は比較的早めに仕事を終えられることもあって、自分のペースで働けるのはよかったなと思います。
移住してすぐの頃は、知り合いも少なくて心細いと感じることもありました。地区の作業もあり「こんな事もやるんだ」と思うこともありましたが、顔見知りが増えて今思えば良かったなと思います。

山中:買い物する場所は少ないですけど、最近は飯島町にもウエルシアができて本当に便利になりましたよね(笑)。
今は夫婦で仕事をしていますが、妻は最初、移住も就農も正直とても嫌がっていました(笑)。でも今は、この環境や景色はとても気に入っているのでよかったです。
夫婦で仕事をするのは楽しいことばかりではありませんが、将来、子どもが巣立った後に「あの頃、ユリを一生懸命作ってたよね」と話せるのがいいなと思っています。それも含めて人生のエピソードかなと。
子供も妻の実家の東京に行くことが度々ありますが、東京に行くと夜も車や救急車の音がしているので、飯島に帰ってくると「静かだね」って言っています。星がきれいだとか、そういう感覚が子供ながらに自然に身についているのも素敵だなと思います。
これから移住・就農を考える方へ
有賀:もし移住や就農を考えている方がいたら、初期投資や生活費など、現実的な準備はしっかりした方がいいと思います。
農業は大変な仕事ですし、すぐに結果が出るわけでもありません。でも、この仕事は、やった分がちゃんと結果に出る仕事だと思っています。また、みなさん本当に親切だなというのは、この場所に来て実感していることです。

有賀:大変なこともありますが、自分で決められる、というのはやっぱり大きいなと思います。そこが会社員の頃とは一番違うところかもしれません。今後は、出来たらもう1人仕事を任せられる人を育てながら、自分の時間を少し作っていけたらいいなと思っています。
山中:今は、現状を維持するだけでも大変な時代だと思います。農業は毎年一年生だと言われますけど、本当にそうだなと感じています。気候変動の中で、去年と同じものが作れたら、それだけで成功、という感覚です。

山中:農業は体力が必要な仕事ですし、思っていたのと違うという理由で辞めていく人もたくさんいます。毎日、同じことを繰り返す作業も多く、結果が出ないこともあります。自然相手なので、自分ではどうにもならないこともある。向き不向きがはっきり出る仕事だと思います。
ただ、大変なことは多いですが、自分で選んで、自分で続けているという納得感はあるので、この暮らしを選んでよかったと思っています。毎日、同じ景色ではなくて、天気や季節によって全部変わる。それが大変でもあり、面白さでもあるのかなと思います。