いいじまのひと

【農家さんの座談会 vol.2|前編 】[農家×移住×夫婦] 移住と就農、それぞれのはじまり

2026.03.25
工藤夏樹さん、奈津美さん/福井守さん、あかね さん

今回は飯島町へ移住し、農業を営む二組のご夫婦にお話を伺いました。
前編では、移住を決めたきっかけや農業を始めるまでの経緯、季節に応じた日々の仕事などについて、実際に現場に立つお二人だからこそ語れるリアルなお話をお届けします。

【座談会メンバー】

工藤 夏樹(くどう なつき)さん・奈津美(なつみ)さんご夫妻
「アスパラ農園 なつぞら」にてアスパラガスを栽培。農園名は、お二人の名前に「なつ」がつくことに由来しています。ハウス面積は20アール。2020年2月に飯島町へ移住。

HP:長野県アスパラガス農家|なつぞら
Instagram:アスパラ農園 なつぞら (@natsuzorafarm)
ECサイト:アスパラ農園なつぞら - 産地直送通販 食べチョク

福井 守(ふくい まもる)さん・あかねさんご夫妻
地域おこし協力隊として1年間の研修を経て独立。テッポウユリ(面積約60アール)、米(100アール)、ユーカリを栽培するほか、農業法人でも勤務。2016年に飯島町へ移住。

移住と就農、それぞれのはじまり

夏樹さん: 移住する前は、東京の交通関係の会社で働いていました。移住のきっかけは、妻が東京で開かれていた移住セミナーに参加し、たまたま飯島町のブースで当時の移住担当の方に声をかけられたことです。その方に「一度来てみませんか」と言われ、週末にバスで訪れてみてから「いいな」と思いはじめました。

奈津美さん: 私は当時、住宅メーカーで働いていました。最初、夫はあまり移住に乗り気ではなかったのですが、一度飯島町に来てみたらすごく気に入ってしまって…。それからはむしろ夫の方が積極的になりました。

夏樹さん: 移住を考える中で役場の方がいろいろな人に会わせてくれて、ユリ農家の山中さん(※記事参照)にもお会いしました。「農業は楽しいよ」と言われ、興味を持ち、その後、アスパラを教えてくれる先生も紹介していただく等、地域の関係者のサポートをいただきながら始めましたね。最初は町営住宅で暮らしながら研修を受け、地域の農業関係者を通じて今の家と畑を紹介してもらいました。

守さん: 私は高校生の頃に山岳部で、この辺りの土地勘はありました。前職は愛知県で有料道路をつくる会社に勤めていて、妻は愛知県の職員として約20年働いていました。「そろそろいいかな」とそれぞれ仕事を辞め、1年間の旅行に出ましたが、途中で体調を崩し、療養中に空気の良い場所を求めて長野県に来ました。

あかねさん: 名古屋からも比較的近かったこともよかったです。最初はインターネットで飯島町を見つけ、たまたまその時に地域おこし協力隊の募集があり、現地説明会に参加したことがきっかけです。

守さん: 当時課長だった今の町長に「ユリをやってみないか」と声をかけていただき、「じゃあ、やってみようかな」と軽い気持ちで農業を始めました。

あかねさん: 私たちは「農業」をやりたくて来たというより、「移住」したい思いが先でした。移住できれば、仕事はサラリーマンでもいいかなという気持ちもありましたが、地域おこし協力隊で農業の募集があったので、ご縁もあってそこから農業に関わるようになりました。

季節に応じた農業の働き方

夏樹さん: 私たちが一番忙しいのは夏です。朝4時に起きて、5時から9時、長いときは午前10時頃までアスパラの収穫を行います。ハウス内で一本ずつ収穫し、その後は一人が選別作業を担当し、もう一人が草刈りや圃場の管理を行います。午後は出荷の準備やコンテナへの詰め込みを進めながら、夕方5時頃まで管理作業を続けます。

冬は仕事が少ないと思われがちですが、畑の片付けや堆肥入れなどの作業を行っています。アスパラガスのビニールハウスは小さいため大きな機械が使えず、人力に頼るために時間と労力がかかり大変です。

奈津美さん: 4月から10月中旬までが繁忙期ですが、6月は収穫量が少し落ち、11月はアスパラが枯れるのを待つ時期なので、比較的落ち着きます。オフシーズンは夫は農業法人のネギの手伝いに行き、私はりんごや柿の収穫などのアルバイトに出ることもあります。12月からは枯れたアスパラガスの抜き取りや堆肥入れ、ビニール被覆など、春に向けた準備を進めていますね。

守さん: ユリは6月中旬からの4ヶ月間が繁忙期です。明るくなるのを待って収穫を始め、午前中のうちに出荷作業を終えるようにしています。それ以外の時期は他の作業を手伝ったり、米づくりに取り組んだりしています。

あかねさん: 露地栽培なので暑さの影響も大きく、真昼間は外に出られません。花も鮮度を保つため、朝か夕方の涼しい時間帯に収穫しています。

農業の魅力とやりがい

奈津美さん: 今の仕事は通勤がないことも魅力ですね。以前は電車通勤でしたけど、少し遅延しただけで駅が人で溢れてしまって大変で…。でも、今は車で3分走れば畑に着き、終わったらすぐ家に帰れる。それだけでストレスが全然違いますね。通勤時間がなくなった分、時間を有効に使えるのは大きいです。

守さん: 通勤していた時は満員電車が苦手で、6時には家を出ていました。それが今は作業場も家の横ですし、畑も遠くて10分くらいです。最近はお米も作り始めましたが、「食べ物」を作っていると反応が返ってくるのが嬉しいですね。農業は、作ったものを直接受け取ってもらえるんです。

あかねさん: 花ももちろん嬉しいですけど、食べ物は「おいしかったよ」と言ってもらえます。会社員の時は、自分が直接「これを作った」という感覚はなかなか持てなかったので。自分で作ったものを人にあげられる、それが純粋に嬉しいですね。

奈津美さん: アスパラは家庭菜園でなかなか作れないので、持って行くとすごくありがたがられて、物々交換して頂けるのが楽しいです。

夏樹さん: それから作業そのものの達成感もあります。ハウスの中をきれいにしたり、いいものができた時には目に見える達成感があります。同じ作物を作っている人同士で仲間が増えたり、情報交換できるのも良かったですね。

後編では、夫婦で農業に取り組む中で感じたことや役割分担の工夫、体力面での課題、そしてこれからの農業との向き合い方について伺います。


photo by IIJIMA NOTEフォトアンバサダーmiwaさん
miwaさんのInstagram

この記事を書いたライター
ライター

気賀澤絵美

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