いいじまのひと

【いいじまの人】Uターンで開いた音楽サロン『Tempo di moon』一人ひとりによりそう音楽を。

2026.03.26
『Tempo di moon』大嶋さくら さん

【概要】
静かな田園風景に二つのアルプスを仰ぐ飯島町。子育て世代の移住も増え、地域のなかにある小さな学びや表現の場へも関心が広がっています。今回は、飯島町で音楽サロン『Tempo di moon』を主宰し、子どもたち一人ひとりに寄り添った音楽教育の場をひらく大嶋さんにお話を伺いました。

飯島町で音楽サロンを開業するまで

音学大学を卒業後、一度幼少期から続けていた音楽を離れ、都内で就職されたという大嶋さん。リトミックのアシスタントをきっかけに、音楽の道に戻り、故郷である長野県飯島町にUターンされたそうです。飯島町で音楽サロン『Tempo di moon』を開業するまでのお話をお伺いしました。


「ピアノの先生という仕事を始めたのは15年ほど前から。その前はフォトスタジオでのヘアメイク、ブライダルや受付、事務など30個以上のお仕事を転々としました。

そういった中で一番好きなことに本気で向き合いたいという気持ちが育ち、リトミックのアシスタントのアルバイトをきっかけに音楽の道に戻ったんです。そこから働きながらリトミックの勉強をしたり音大で学びなおしました」

「Uターンをしてから3年ほど隣の松川町でピアノ教室をひらいていたのですが、そちらがキャンセル待ちをしていただくようになり、一緒に音楽をする仲間と場所を探していたところ、飯島町にご縁がありました」

「しばらく地元の飯島町を離れていたのですが、教室の開設をきっかけに昔の知り合いやお世話になった方たちからたくさんお声をかけていただけて、その点が生まれ育った土地で開業するよさかなと、人の暖かさに感激しています」

「この教室には主に保育園の年少さんから小学生までの生徒さんが通われています。コンクールの出場を目指してカリキュラム通りレッスンを重ねていくというより、音楽を好きになってもらえるよう一人ひとりにとことん寄り添う時間を過ごしていただきたいと思っています。今はそんな想いを共有した5人の先生と共に活動しています」

音楽サロン「Tempo di moon」とは?

教室では、音楽を学ぶことそのものよりも、子ども一人ひとりの感覚や気持ちに寄り添う関わりを大切にしているそうです。大嶋さんに、日々のレッスンの中で心がけていることについてお話を伺いました。


「わりとのんびりとした南信の地域柄もあって都心に比べると、音楽の早期教育が必要とされている印象は少なく、わたし自身も0才や1才からの勉強って必要かな? と考える面もあります。

一方で、子どもたちの耳や感覚が豊かなうちに、デジタル音に耳が慣れてしまう前にアコースティックのきれいな音を浴びて感覚を刺激してあげたい、とも思います。

学問としての音楽の押しつけにはなりたくないけれど、一緒に、純粋に楽しんでいける場所になればと思っています」

「また、先生と生徒という立場が上下関係にならないようにと心に置いています。ある程度は導かなければいけないので、バランスに気を配っています。

こちらが「今日はこんなことをやろう」とカリキュラムを組んでいたとしても、その日教室に来た子どもさんの雰囲気を見て言葉をかけます。嬉しかったことや消化できなかった気持ちなど、持ち帰ってきた感情を話すお子さんの顔を見て「聴く」ということを第一に大切にしています。

同じレッスン内容でも、お子さんによって伝え方やアプローチの仕方は何通りにもなるので、同じ方法でやらないように心がけています。一人ひとりにとことん寄り添っていきたいと思っています」

【体験レッスンの様子】

今回は私の年長と一年生の息子が体験レッスンをさせていただきました。歌ったり踊ったりするのが大好きな2人ですが、音楽教室にお邪魔するのは初めての経験です。

緊張気味にお部屋に入った息子たち。にこやかな大嶋さんに迎えられ、DIYのあたたかい印象の教室のあちこちに用意された楽器を手に取るうち、自然と音を出しはじめました。各々が自分の世界へ入っていきます。

「これはなに?」「これは知ってる!」とつぎつぎ目移りしていく息子に対して「これは手作りだよ」「よく知ってるね!」と関心に気づいてくださる大嶋さん。長男がピアノに触れるとすかさず大嶋さんが隣に座り、連弾のごとくその音を何倍にもひろげて応えてくださり、即席のメロディができあがり。見ている私にも伝わってくるほど子どもたちがわくわくしていました。

大嶋さんはご自身のピアノの経験や都内での就職経験を通し、幼少期の心の育ちについても想いを馳せていらっしゃるように感じました。

体験レッスンを通して気がついたことは、大嶋さんが常に子どもたちに集中してくださっているということ。一人ひとりの表情や手元に心を配っていて、気持ちが向いた方向を感じとって一緒に楽しんでくださっているように感じました。

お話しを伺うなかで「同じ内容でもお子さんの個性に応じた伝え方を特に大事にしている」とおっしゃっていた大嶋さんのご指導は、まさに子どもたちが自分らしく音楽と出会える時間でした。

「気持ちの揺れがあるのは当たり前で、音楽を通して下がっていた気持ちが上がったり前向きになったり、休みの日でも『行きたい!』と思えるような体験にしたいです。どんな自分でも受け入れてくれる大人の存在が一人でもいれば、自己肯定感につながるのではと思います」

大嶋さんの音楽に対する想いを目の当たりにした息子たちの体験レッスンでした。

これからの活動について

最後に、今後の活動の展望と、飯島町での暮らしのなかで感じていることについてお話を伺いました。


「今通ってきてくれている小さい子が大きくなったら、地域の方に向けて子どもたちのコンサートを開いてみたいです。音楽家の職業体験として、人前で演じる覚悟のようなものも経験してもらえたらと思います。

また、この教室の名前に『サロン』をつけているのは、音楽サロンという拓かれた場として生徒さん以外の方にも来てもらえたらという想いがあります。音楽に関わるさまざまなイベントも企画していきたいですね」

「都内から地元の飯島町に戻って、『家で、朝、窓を開けたとき深呼吸ができる場所』だと感じました。緑を求めなくても中にいる感覚です。音楽や芸術には自然が必要だと思います。自然界には直線がなく、音楽も常に揺らいでいるという点が似ているからです。ここでは感性を育めると思います。都会で言われた『何にもないが何でもある』という言葉を実感しています」


【取材後記】 
飯島駅に向かうイルミネーションの合間に大嶋さんの音楽サロン『Tempo di moon』が構えられています。大きな看板はなく入口のガラスドアに手描きの教室紹介が親しみやすい雰囲気なのは、大嶋さんの人柄が感じられるようでした。今回お話しをお聞きして、感性が豊かで柔和な音楽家の方というイメージの舞台裏を少しだけ見せていただけたように思います。中でも生徒さんと音楽との関わりをとても大切にされている印象が強く残りました。今後、ピアノスクールだけでなく、地域に向けたイベント活動へも展望を描いている大嶋さんのご活躍が楽しみです。


オンガクサロン Tempo di moon
WEBサイト:オンガクサロン Tempo di moon
Instagram:オンガクサロン Tempo di moon

Photo by IIJIMA NOTEフォトアンバサダーmiwaさん
miwaさんのInstagram

この記事を書いたライター
ライター

あさかおる

RECENT POSTS

2026.03.26
【いいじまの人】Uターンで開いた音楽サロン『T…
2026.03.25
【農家さんの座談会 vol.2|後編 】[農家…
2026.03.25
【農家さんの座談会 vol.2|前編 】[農家…