『夕焼けこやけのその後に』
飯島町に越してきて4年目。豊かな風土と人の懐の深さに励まされ、3歳と1歳の年子男児を充実した気持ちで育てています。
不安定な天気の晴れ間に、農道を走るトラクターをいく台も見ました。草だらけの田んぼが耕され、水にひたり、代かき作業の準備が整えられていく工程は美しく、息を吹き返した休耕田からはカエルの声が高らかに立夏を知らせます。
足元にくっきりとした青空が何枚も連なるこの季節は、新緑の山並みとも相まって忘れがたい原風景の一つです。
夕方、6時を告げるメロディが残照の空に響いても、まだ遊びたいような名残惜しさを覚えるのもこの時期です。最近はこの時間に散歩に出ることも増えました。
明るいとはいえ暮れ始めると早いので、あらかじめ「特別に、もう10分だけお外で遊ぼう」や「ピンク色のお花を見つけたら帰ろう」など、気持ちを切り替えるための言葉を工夫して、短時間であることを親子で確認して出発します。
たいていは家の近所を歩きます。夕暮れの町中は車通りが日中に比べ少し増え、田畑は一日の仕事を終えて整然としています。田んぼの横を通りながら、長男がお気に入りの農業機械を見つけました。
「トラクターだよ、テレビと一緒だね」
「ほんとだね、本物はこんなに大きいんだね」
「じいじの家にもあったね」
自分の知っているものを見つけると、とても満足そうです。
先日は、飯島町の図書館の横に設置されている大好きな遊具へ出かけました。この場所では普段抱っこひもの次男もやわらかい草の上に降り、大好きな滑り台にのぼったりベンチで伝い歩きをしたりして楽しめます。
日中の暖かさがまだぬるく残っており、「帰ろうか」の一言が何度も空振りをします。それでも風が涼しく揺れる頃合いに「大回りして車に戻ろう」と言うとタイミングが合うようで、「いいっ子センター(子育て支援センター)」の中を覗きつつ駐車場へ歩きます。
「先生いないねぇ」と、言う長男に、「明日はいいっ子センターにきて遊ぼうか」と、声をかけると思わず笑顔になります。当たり前のように行く場所があり、会いたい人がいることに気づき、なんだかホッとするような温かい気持ちになりました。
夕映えの空は淡くにじんで、明日もいい日になるだろうな、と思わせてくれる初夏でした。