【いいじまの人②】”百鬼ゆめひな” が魅せる人形師の世界 - 移住から文化継承まで -
人形師『百鬼(ひゃっき)ゆめひな』こと飯田美千香(いいだみちか)さん。等身大人形がまるで舞い踊っているかのような表現が特徴的な”どんどろ流”で、人々を魅了し続けています。飯島町を拠点に舞台や町内のイベント、神社仏閣での奉納演舞などで公演を行うほか、企画から人形の制作まですべて飯田さん自らが手がけています。
「子どもの頃から好きだった人形が仕事に結びつくなんて思っていませんでした。舞台のこともわからずにこの世界に入りました」と語る飯田さん。現在は飯島町で暮らしながら、人形師として幅広い地域で活躍されています。後半は、飯田さんの今後の活動に対する想いを伺いました。
演者の生き様を真っ直ぐに感じて 一人劇祭の復活
誰かの心の支えになるために、人形の世界を発信し続けるという飯田さん。そのエネルギーの源は師匠岡本さんの大きな存在でした。”どんどろ流”を継承する飯田さんの次の公演『一人劇祭 伊那谷化けるんです。』に向けて意気込みを伺いました。
「12月1日に飯島町文化館の小ホールで公演があります。今回は女性三人による一人芝居です。私は大勢で出るのもすごく好きですが、小ホールのぎゅっとした場所でお芝居を身近に感じて欲しいということもあるのです。
演者の生き様をストレートに感じられるところに一人芝居の良さもあると思っています。表現者が”これを伝えたいんだ!”という強いメッセージがあったとしたら、見ている人にしっかりと届いて、その人の心を震わせることができるのではないかと思います」
「『伊那谷 化けるんです。』という公演名は昨年、瀧本祐一(たきもとゆういち)さんに命名してもらいました。”自分の子どものころに見たどんどろと、今のゆめひなさんを一言で表すとこれだ!”っておっしゃったんです。
今年は”一人劇祭(いちにんげきさい)”という名前も大切にしたい気持ちもあり、『一人劇祭 伊那谷化けるんです。』というタイトルにしています。また、演者も日常を打ち破って変化し、自分たちも化けようとの思いでワークショップもやっています。ちょっと怖くて、不思議な一人芝居のパフォーマンスのフェスになったらいいなと思います。妖怪や怖くて不思議な民話を語る方とかも良いかなって思いました」
「もともと”一人劇(いちにんげき)”は、韓国の人形劇をやられている方がいて、岡本さんとタッグを組んで、1回目は韓国で2回目は飯島町でやっていたんです。師匠から継承した私のスタイルは人形劇とも人形芝居とも言えずジャンルがないのですが、飯島町ではなぜかこれを”一人劇”と呼ぶようになりました。
”あ、どんどろ。一人劇のね!”って言ってもらえて、ここ飯島町では”一人劇”で通用するんです。ただ、そういう言い方をする方はだんだんと高齢になられているので、忘れられる前にその言葉を復活させたいなと思っています。その言葉の復活が自分たちの文化の伝承になれたらいいなと思っているところです」
思い出の場所と心を救った自然の力
飯島町に根付く ”一人劇”。『一人劇祭 伊那谷 化けるんです。』の公演まであと少しです。今では飯島町に欠かせない存在となった飯田さん。最後に飯島町についてもお伺いしてみました。
「師匠の公演を最初に見た『千人塚公園』は私の中では大切な場所です。今は桜の木は古くて伐採されていますが、あの場所が最初に見た桜の舞台と名付けられた場所なんです。今は様変わりしてしまいましたが、30年ぐらい前の春を思い出しながら歩いてみたりして。千人塚公園でイベントがあるとやっぱりそれを思い出しますね。
里山が好きなので傘山(からかさやま)も好きですし、『蕎麦ひねもす』さんもお気に入りのお店です」
師匠との思い出の場所でもあり、大切な拠点でもある飯島町。そんな飯田さんから飯島町へ移住を検討している皆さんへメッセージをお願いします。
「表現活動や創作活動をされたい方にとっては稽古場や作業場といった場所が必要だと思います。家賃も安く土地も広いところが多くておすすめです。ここは文化もたくさんある不思議な谷だと思います。表現を志している人も多く、ちょっと特殊なところというか。
思いきって中央を離れるのも創作する面では良いなと思っています。やはり雑念もないですし、アルプスの景色が癒してくれるので、自然の力ってすごいなと思います。師匠が去って寂しくて辛かったけれど、星や雲、日々の空の模様や山が美しくて本当に救われました。
最後に”とにかくやってみませんか?”というのを皆さんに伝えたいです。何かやってみたい!という人がいたらまずは少しずつやってみるのも良いなと思っています。表現や創作をしたい人だったらこんな良いところないと思いますよ!」
取材後記:
飯田さんの行動力と人形師という職業がとても魅力的に感じました。師匠の岡本さんに対する熱い想いと、岡本さんの継承者としてどんどろ流を後世に伝えようと活動を続けている飯田さんの姿が印象的でした。一人劇という言葉はもしかすると若い世代にとっては新しいものかもしれませんが、飯田さんの舞台を見たらきっと誰もが心を奪われ、その言葉が未来へ生き続けていくのかなと感じました。ちょっと怖くて不思議な百鬼ゆめひなさんの世界に皆さんもぜひ、飛び込んでみてはいかがでしょうか。
photo by IIJIMA NOTEフォトアンバサダーmiwaさん
miwaさんのInstagram
【百鬼ゆめひなさん】
WEBサイト:百鬼ゆめひな
Instagram:飯田実千香【百鬼ゆめひな】
『伊那谷 化けるんです。一人劇祭』
とき:2024年12月1日(日)開演14時/開場13時30分
ところ:飯島町文化館 小ホール(長野県上伊那郡飯島町飯島2489番地)
料金:
前売・予約 3,000円(18歳以下 1,000円)
当日 3,500円(18歳以下 1,500円)
★飯島町民割 2,000円◉要事前申込み/おひとり様最大3枚まで購入可能です。
ご購入時、代表の方のみ住所確認させていただきます。
出演:
劇団ムカシ玩具 舞香「神々の謡〜知里幸恵の自ら歌った謡」
百鬼ゆめひな「木の花咲くや姫」
東しのぶ「鬼会」
《チケット取扱い》
飯島町文化館 0265-86-5877
たろう屋 0265-88-4111
風の谷・絵本館 0265-86-5546
百鬼ゆめひな 080-5541-0706
【主催】どんどろ流 百鬼ゆめひな
【共催】飯島町/飯島町教育委員会
【後援】特定非営利活動法人アクターズゼミナール伊那塾/一人劇を育てる会
公式サイトはこちら