【美味しい果物栽培を学ぶ⑯】
~梨の収穫期~
2021年4月から飯島町で地域おこし協力隊をしている伊藤です。このコラムでは、農業初心者である私が感じた果樹栽培の魅力や体験したこと、日々の学び、飯島町での暮らしについて書かせていただきます。
TOPの写真は来年以降の梨の販売に向けて撮影した「二十世紀梨」の宣材写真です。
黄色く完熟した梨を並べて撮影しましたが、実際に発送する際はどのような梨を箱に詰めるかはまだ検討中です。
なぜなら、一番美味しい時期に収穫した梨を箱に詰めて発送するのが、一番喜ばれると思っていたのですが、「完熟した梨ばかりを入れたら受け取った人は急いで食べなくてはいけないので少し青みが残るものも入れておくと良いよ」と言う話を聞き「確かに」と納得したからです。
先輩の農家さん方が予測できない自然を相手に「こだわり」と「作業効率」に折り合いをつけ最高の梨を消費者の元に届けている姿を見て、自身の果樹園の方向性を考えさせられました。
9月は梨の収穫と選果について紹介します。
【収穫】
果樹園の景色は収穫前と後で大きく変わります。
梨は実がなっている時に力が掛かっていなかった方向に傾けるとすぐ取れてしまいます。
梨同士で支え合っている実は片方を取ったときに残された方の支えが無くなり落ちてしまったり、梨の重さで枝を支えている棚が下がって低い所の実に人がぶつかって落ちてしっまたりするので急ぎながらも慎重な作業が求められます。
収穫した梨はコンテナに詰めるのですが大きさの異なる梨を固いコンテナに詰めるのはパズルのようです。軸が他の梨に刺さらないように向きを調整したり、コンテナの中で動いて梨同士がぶつかり「うて※」にならないように、ぴったり入れるのはなかなか難しいです。
※うて・・・あざのような感じで力が加わった所が柔らかくなり傷みやすくなる
青い空に白い雲、緑の葉っぱ赤い袋、オレンジと水色のコンテナ、果樹園が一年で一番カラフルになる瞬間だと思います。
急に秋の深まりを感じます。
【選果】
写真は選果のために仮設で作った作業台です。これだけでは足りず後で増やしました。農家は畑以外もなかなか場所が要ります。
収穫した梨は出荷方法や梨の状態によって選別します。
JAに出荷する場合は品種にも寄りますが除袋(袋をかけて育てた梨の袋を取ること)をせず、コンテナに詰めるだけで受け取ってくれます。
手数料が高く、買い取り金額が安いように思っていましたが、一つひとつ袋から出して、ほぞ(軸)を切って、サイズや傷の有無を調べ選別箱詰めする手数料、運送会社への手数料、スーパー等に並べる為の手数料等を考えると納得できます。
直接お客さんに郵送したり、袋に詰めて直売所で販売する場合は各農家それぞれが規格や値段を設定します。同じように直売所に並んでいても生産者や一年間の天候、出荷する日によって、個性がありますのでよく見てお気に入りを見つけてください。
【今月の一枚】
蜘蛛の巣に梨の葉っぱが引っかかってハートに見える写真です。
梨の木は収穫が終わるとすぐに少しずつ葉っぱを落とします。実が無くなって葉っぱも無くなりはじめて、近所の田んぼの稲刈りも終わって景色が寂しくなる季節。特に曇りの日なんかは考えなくても良いことまで考えてしまいますが、考えたってしょうがないことだってあると気持ちを切り替えて、「ハートの葉っぱを見つけた」とか小さな幸せに目を向けて過ごして行こうと思います。