いいじまの日々

【いいじま空き家探訪 〜 Muir 〜】空き家だからこそ面白い。本物がつくる温かみ。

2023.07.13
上吉原香里さん、久林申弥さん さん

七久保駅前に昨年オープンした宿、ヘアサロン、シェアキッチンの複合施設Muir(ミューア)。地域おこし協力隊の2人が1年半かけて9割をDIYしながら空き家を改修。こだわりの詰まった建物に人が集まり、どんどんと進化していく様子が見えました。空き家の古民家だからこそ、そしてDIYだからこその良さを聞いてきました。

空き家を活用しようと思ったキッカケ

地域おこし協力隊の上吉原さんと元隊員の久林さん夫婦は、飯島町で協力隊をはじめた当初から、この自然豊かないいじまで宿をやりたいと考えていました。物件を探すにあたっては、とにかく町民のいろんな人に自分たちがやりたいことを伝え、いい家がないか聞いて回っていたそうです。

半年ほどして「こんな物件があるよ」と教えてもらったのが、地元企業さんが保有している、七久保駅徒歩30秒、築40年の2階建て物件でした。どっしりとしたつくりの外観からも、一般の家族が住むには大きすぎる物件だと分かります。広さやアクセスのしやすさは宿にぴったり。しかし最初から理想の物件だと思っていたわけではありませんでした。

もともと海外でも長く美容師をしていた経験があるお二人でしたが、当初ヘアサロンをする予定も、シェアキッチンをする予定もありませんでした。しかし、大きすぎるこの家をいろんな人に見てもらって意見を聞いたり、構想を練ったり、役場にも相談しているうちに、一部屋でオーガニックヘアサロンをすることが決まり、またちょうど町がやろうとしていたシェアキッチンも共同事業として行うことになりました。

こうして、宿×ヘアサロン×シェアキッチン<Muir>という他にはない複合施設ができていったのです。

キッチン
ダイニングスペース

空き家を実際改修してみて

改修にあたっては、施工もできる町内の設計士さんに設計をお願いしました。師匠ともいうその方に厳しくダメ出しされながら、実に改築の9割を2人でやったそうです。

新築とは違い、元からある構造によって間取りの制約はあります。しかし、むしろそれを生かすことが唯一無二のオリジナルになりました。盛り込みたい機能については「工夫次第でなんとかなる」とのこと。

DIYイベントも5回ほど実施。準備も大変で大幅に工事が進むわけではなかったようですが、町の人にお店の存在を知ってもらえるきっかけになったり、オープンを楽しみにしてくれたことがよかったそうです。「何よりみんなで話をしながらやるのが楽しかった」と上吉原さん。

DIYの様子

ずばり改修にかかった費用は1300万円。

うち50万円は飯島町空き家改修費等補助金を使ったそうです。

ほかにも町では、新規事業支援の補助金や、空き家の取得補助金もあります。(2023年現在は、買取金額の50%、上限200万円と手厚い)。課ごとや県でそれぞれ違う制度/補助金があるため、役場の中のいろんな課の窓口や商工会にかたっぱしから相談しに行くのがいい、とアドバイスしてくれました。

ヘアサロン

古民家は断然楽しい

工務店さんに頼んだら木目風の既製品をパパっと取り付けてくれますが、自分でDIYすると一から木で手作りしていくことになります。しかし実はそれがかえって建物全体に「本物感」を与え、温かみを出してくれます。

何より古民家はもともと本物のいい材が使われています。泊まりに来たお客さんが「なんだか落ち着く」と言ってくれるのは、そういった本物がつくる温かみがあるからではないか、と教えてくれました。

ちょうどこの日シェアキッチンに出店していたソノ・フェリーチェさんも「いいじまでは本物の野菜や本物の水がすぐ手に入る。」と言っていたように、田舎は本物が手に入りやすい、ということなのかもしれません。

(ランチをいただきながらお話を聞きました。ズッキーニとサルシッチャのバジルソースパスタ)

厳しい師匠のもとで、7回も塗り重ねた壁をしみじみ見ながら、「自分たちでDIYした家はやっぱり愛着が沸く」と久林さん。掃除やメンテナンスも苦じゃないそうです。

実は筆者もただ古いだけの民家に住んで細々とDIYをやっていますが、道具や材料を準備するのも大変で、小さな部分でも完成するまでに意外と時間がかかるので、家全部をDIYで直すなんて正気の沙汰じゃないなと思って聞いていました。

「古民家の方が断然楽しい」と強くうなずくお二人に、DIYでの古民家改修を成功させるコツを聞きました。「やりすぎないことが大事。まずは1部屋だけやって、他は業者にまかせてもいい。楽しんでやることが大事。」とのこと。

自分たちがどの範囲までなら楽しんでできるのか、というのを基準にしながら、いろんな人に頼るのがいいのかもしれませんね。

無理せず楽しく、時に休みながら
玄関

空き家に興味がある方へ

宿をと思って考え始めた建物が、癒しのヘアサロンと、飲食店をしたい人たちの挑戦の場であるシェアキッチンのある複合施設となり、さらに人が来ることでどんどん新しい何かが生まれてきているそうです。一棟貸し切りでセミナー合宿が企画されたり、仲間との集まりに使ってもらったり、先日はリビング部分でライブ配信をしたい人が使ってくれたりなど、思ってもいなかった使い方もお客さんが来ることで生まれました。

セミナー合宿の様子

「もちろん大変だったこともありますし、ここでは言えない裏話もいろいろあります…。空き家や改修に興味があれば、なんでも喋りますので、ぜひMuirを見に来てください!」

この記事を書いたライター
ライター

いぶき

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